2015年11月下旬
僕26歳
彼女35歳
お金がない
重い足取りで、
自宅の玄関を出た僕。
彼女はまだ寝ていた。
昨日、パチンコ店に閉店までいたせいか
とにかく寝不足だった。
すやすや眠る彼女を横目に、
”なぜ、僕だけ働いているんだ”
そんな気持ちになった。
もともと、精神は安定していた僕。
だが、彼女と同棲を始め、
上手くいかないストレスや
H課長からの理不尽な態度に
常にイライラする
そんな状態に陥っていた。
更に、お金がない。
自分がパチンコをし、
全額投入した。
自分が悪いのにも関わらず、
僕は悪くない
H課長のせいだ
彼女のせいだ
助けてくれない周りのせいだ
そう人のせいにして
現実から目を背けていた。
会社につく。
いつも寄るコンビニには寄らなかった。
というか、
寄ったとしても、
商品を買うお金が
僕にはなかったんだ。
所持金150円。
こんなんじゃ、
飲み物一本で終わってしまう。
とにかく、給料日まであと1日。
今日と明日耐えれば、
なんとかなる。
そう僕は自身を勇気づけ、
自分の机へ座った。
H課長は、
朝から出張とのことだ。
久しぶりに、
社内に平穏な雰囲気が漂っていた。
B先輩「ハタムラ、おはよう。昨日は途中で帰ってごめんな。
しっかり休めたか?」
B先輩だ。
僕は寝不足やストレスから、
B先輩に対して
冷たい態度を取り続けていた。
僕「はい、大丈夫です。すみません、トイレ行きます」
そういってトイレと称し席を立つ。
とにかく、
H課長にのターゲットにされている自分
を認めたくなかったんだ。
B先輩の優しさや気遣いは、
その時の僕にとっては
傷口に塩を塗られている
そんな感覚に陥っていた。
B先輩は「そうか…」とだけつぶやいた。
H課長がいないだけで、
自分の業務がはかどった。
理不尽な注文もない。
あの人さえいなければ…
そんな事を考えると、
はらわたが煮えくり返った。
休み時間。
当然僕は、昼ご飯がない。
ああ。もうなんかどうでもいいや。
そう思い、
同僚たちが食堂へいくのを横目に
自分の車へ向かった。
車に乗り込み、
財布を開けた。
何度みても150円。
これで、何ができるだよ…
沸々と湧いてくる、
誰に対してか分からない怒り。
僕は、車のシートを思いっきり
殴った。
とにかく、殴り続けた。
なぜ上手くいかないのか。
彼女の父親に言われた言葉も、
もう僕の頭の中にはなかった。
彼女を幸せにします。
そう父親に誓った筈だったのに。
なぜ、
僕ばかり与えなければいけないのか
そんな事を考え、
そして、
H課長に目をつけられている事実
そんな職場での環境に、
プライドの高いはどうしても認めたくなかったんだ。
その日、僕は
体調不良
と称し、会社を早退した。
車を飛ばし向かったのは、
実家だった。
車を無造作に停め、
家へ入る。
リビングに入り、
くつろいでいる母親と目が合った。
母「あれ?おかえり…?」
僕「母さん、お金貸してくれないかな」
挨拶をせず、
僕は母親にそう言った。
#嫁あり。子あり。持ち家あり。1000万の借金有。