２０１５年９月下旬
僕２６歳
彼女３５歳
その日は朝から気分が良かった。
仕事終わりに、同僚とパチンコへ行く。
そんな楽しみが待っていたからだ。
もっぱら僕は負けるなんて考えていない。
全財産の５０００円が、
２倍になる
そう思っていたからだ。
普段より３０分早く仕事が終わった。
”神様が早くパチンコへ行けって言ってる”
そんなバカげた事を、
考えていた僕。
５０００円しかないという
気持ちの焦りが、
”絶対勝てる”
という根拠のない自信に繋がっていた。
同僚と待ち合わせ、
某パチンコ屋の門をくぐった。
凄まじい音の世界。
ジャラジャラという玉の音。
僕の胸は高まった。
この５０００円が、
今から倍になるのか…！
同僚はお目当ての台へ一目散に向かっていった。
そのあとを僕も追う。
同僚はゆっくりと台を見回す。
正直、台なんてどこでもよかった。
なんだろう。
早くパチンコを打ちたい。
そんな気持ちが勝り、
僕は一番近くの台に座った。
まずは１０００円を投入。
ジャラジャラと回り始める。
ダメだ。
また１０００円を投入。
そして、また１０００円を投入。
ダメだ……
また１０００円を投入しようとした時、
同僚の台が派手な演出、
つまりフィーバーになった。
僕は、じっとその光景を見つめた。
あと、２０００円しかない。
僕が勝つはずだったのに…
いや、
そもそも手持ちのお金が少なすぎたんだ。
結局、その後１０００円を投入したが、
僕の台が当たることはなかった。
かわりに、同僚は大当たり。
３万円が１２万円に化けていた。
「いや～本当最高だった！付き合わせて悪かったし、
今日の飯は俺がおごるよ」
そう言った同僚が
とても眩しく見えた。
その後、同僚と居酒屋へ行き
宣言どおり食事代１万円を
おごってくれた。
同僚と解散し、
ほろ酔いで帰路につく僕。
今日は負けたけど、
なんだか楽しかったな。
今日は負けてしまったから、
多分次は勝てるだろうな。
次は…
次はもう少しお金を持って
参戦しよう。
負けた分を取り返すんだ。
残金１０００円。
給料日まであと２日。
#嫁あり。子あり。持ち家あり。１０００万の借金有。